冠詞とは何かを説明します。
英語を勉強するときに、日本人にとって一番理解しづらいのが「冠詞」ではないでしょうか。「the と aの違いを説明して」と言われてスラスラ説明できる人は少ないと思います。
実際の使用例とネイティブの考え方をまとめてみました。
冠詞とは?

冠詞とは、名詞の前につく「a」「an」「the」のことです。
冠詞の種類
冠詞には、以下のような種類があります。それぞれにルールがあり、英会話やライティングで英語をつかうときは注意が必要です。
・定冠詞
・不定冠詞
・無冠詞
定冠詞から見ていきましょう。
定冠詞「the」とは
定冠詞は、一定のルールによって名詞の前につく冠詞です。日本語にない考え方なので、日本人には複雑に感じます。
細かいルールについては後述しますが、基本的には以下をおぼえておくと便利です。
・「集合体」には「the」をつける
・「構成要素のひとつ」には「the」をつける
「集合体」には「the」をつける

同じマークが並んでいる「グループ」には「the」をつけます。「グループ」「集合体」には定冠詞とおぼえておきましょう。

「the other」は異なるもののグループなので、「the」をつけます。
「構成要素のひとつ」には「the」をつける
複数の要素でできているものの一部には「the」をつけます。「どの範囲を指しているか」が共通認識になるためでしょう。


定冠詞をつけるルール
定冠詞を使うときのルールを説明します。ルールは数が多く、ここで紹介しきれないものもありますが、概ね以下のとおりです。
【定冠詞「the」をつけるルール】
①前に登場した名詞
②何を指すかわかる名詞
③説明される名詞
④ひとつしかない名詞
⑤特定の単数名詞
⑥一部の固有名詞
⑦集合を表す名詞
⑧単位の名詞
⑨体の一部をさす名詞
それぞれ見ていきましょう。
①前に登場した名詞
会話や文中で、以前登場したことのある名詞には定冠詞をつけます。これは、相手にとっても既知の名詞だからです。
This is a flower in the garden.
The flower is very beautiful.
はじめに登場した「flower」は、はじめて使用される名詞です。2文目は1文目の「flower」をさしています。文中に出てきたことで、相手にとって「既知の名詞」になったということです。
A flower is very beautiful.
ここで上記のようにすると、「どの花を指しているんだ?」とおかしな会話になります。
②何を指すかわかる名詞
親しい間柄や、近くにいる人と会話するとき、言わなくても何を指すかわかる名詞があります。
「そこの醤油とってよ」とか「窓を開けてくれ」とかですね。
Close the window, Mike
このときの「window」は話者とMikeのふたりにとって「説明しなくてもわかる名詞」です。窓が一つしかない場合や、アイコンタクトによってどの窓を指しているかわかっているイメージです。
③説明される名詞
形容詞、副詞によって1文の中で説明されている名詞にも定冠詞をつけます。
The iPhone on the table.
これは、追加説明によってどの「iPhone」を指しているかわかるためです。
④ひとつしかない名詞
世界にひとつしかない名詞にも定冠詞をつけます。
The sun
これは、ひとつしかないことでお互い自動的に共通認識になるためでしょう。
⑤特定の単数名詞
楽器など特定の単数名詞には、定冠詞をつけます。
play the piano
これはオーケストラや楽団をイメージするとわかりやすいです。楽団の中では、それぞれのパートがありますが、「piano」は構成要素のひとつです。
このように、構成要素のひとつである名詞には定冠詞をつけます。
英語圏では、会話相手を含めた「舞台」の中で名詞がどのような立ち位置かを無意識に判定しています。「立ち位置」というのは、それが説明済みであるか、相手にとって理解できる名詞であるかということです。
これが冠詞において一番大事な考え方になります。ここが理解できていれば、「不定冠詞」も理解できるので、がんばってついてきてください。
構成要素のひとつというのは、この舞台(オーケストラ)の中に「piano」があることを相手が知っているということです。
⑥一部の固有名詞
国名など一部の固有名詞には定冠詞をつけます。
the Phillippines
the Maldives
これは、これらの国が島の集合体だからです。集合体を表す名詞には、定冠詞をつけます。
the United States of America
同様の理由から「州」や「連合国」のような意味合いを国名に含む場合は、集合体になるので定冠詞がつきます。
⑦集合を表す名詞
先ほどは国名でしたが、次は人の集団です。
the rich
the young
それぞれ「裕福な人たち」「若者たち」のようなニュアンスになります。このように、形容詞にTheがつくことで名詞となる場合は集合体を表します。
⑧単位の名詞
単位を表す名詞には、定冠詞がつきます。
These clothes are sold by the meter.
単位は、集合体の一部と判定されるためでしょう。
⑨体の一部をさす名詞
人体の一部をさす名詞は、定冠詞が付きます。
She caught me by the arm.
人の身体を全体としたときに、「arm」はその一部になります。集合体の中の一部分ということになるので、定冠詞が付きます。
不定冠詞「a/an」とは
不定冠詞は、定冠詞を使わない場合に使用します。
定義はこれしかないのですが、わかりにくいので例をあげて説明します。
不定冠詞をつけるルール
不定冠詞をつかうときのルールは下記のとおりです。
①集合体の中のひとつを指す名詞
②代表となる名詞
③頻度や繰り返しを指す名詞
④作品や人を指す名詞
①集合体の中のひとつを指す名詞
集団の中のひとつ(ひとり)であることを指す場合は、不定冠詞がつきます。
I’m a student.
「わたしは学生(という集団の中)のひとりです」と説明するときに使う表現です。
他にも、「ひとつの・・」「とある・・」のニュアンスで使われます。
②代表となる名詞
①と似ていますが、集団の中から任意のひとつを抜き出して使う名詞には不定冠詞が付きます。
A chertah can run faster than a dog.
「チーターは犬より速い」となりますが、この「A chertah」は「チーターという種の中の一匹」を適当に抜き出して使っています。
適当に一匹抜き出したとしても、一般にチーターは犬より速いというニュアンスを含んでいます。
よって、「どの犬よりもチーターは速い」と理解することもできます。
他にも、「~というもの」「どの~も」のニュアンスで使われます。
③頻度や繰り返しを指す名詞
「~につき」「~毎に」という場合には不定冠詞がつきます。
twice a month
「月に2回」というニュアンスになります。
④作品や人を指す名詞
「特定の人」「特定の人の作品」を指す場合は、不定冠詞が付きます。
a Gogh
これで「ゴッホの作品」というニュアンスになります。
a Ms.Tanaka
このように「特定の人」を指す場合にも不定冠詞が使われます。
無冠詞とは
これまで出てきた「the」「a/an」のような冠詞が付かない場合を無冠詞といいます。
よく使う固有名詞のような心理的距離の近い名詞に使われます。
・人名 (Johny, Anna)
・国名 (Japan, Canada)
・曜日 (Wednesday)
・月 (January, August)
冠詞のまとめ
冠詞は、日本人にはなじみのない考え方のため理解するのが難しいと思います。
ネイティブでも言葉で説明するのが難しいとさえ言われることがあるので日本語メインの我々には尚更でしょう。
しかし、冠詞の考え方を理解することで英語ネイティブの考え方のひとつを理解することができます。これは異なる考え方を知る機会として、外国語を学ぶメリットのひとつだと思います。
また、英会話やメールでも余計な誤解を避けることにもつながるので、すこしずつ理解していきましょう。
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