目標達成に習慣を利用したいと思ったことはありませんか?

TOEICスコアを上げたくて、毎日単語帳をやるみたいなことだね。
筆者もTOEIC900を取るまでに習慣化を利用してきましたが、わたしの実体験では習慣形成の敵(障害)は主に以下だと思うわけです。
- 三日坊主
- 旅行や仕事の忙しさを言い訳にする
- そもそも習慣化したい行動を忘れる
逆に言えば、これらの障害を追い払えば習慣という「恐らくこの世で最強の武器」が手に入るともいえます。野球選手のイチローが毎日素振りをしていたことは有名ですが、一日だけなら誰でもできることを文字通り「毎日」やることは(いい意味で)狂気的であり、また彼を世界的に有名なプレイヤーにするほどの力があることになります。
では、習慣化を再現性高く、かつ意図的におこなうにはどうすればいいのか。偶然では実用性に欠けるため、科学に頼ることにしましょう。
習慣化の障害を取り除く
もう一度、習慣化の障害についてみてみましょう。
- 三日坊主
- 旅行や仕事の忙しさを言い訳にする
- そもそも習慣化したい行動を忘れる
三日坊主の対策
最初の壁であり、おそらく最も高い壁。これをクリアするには、以下が必要です。
- 習慣化する行動を限りなくカンタンで短時間にする
- 習慣化する行動をはじめるトリガーを設定する
習慣は簡単であるほど、また短時間で済むほどに成功率があがります。単語の勉強は1日100語なんて目標はやめましょう、ナンセンスです。1日3語で充分です。筆者も1日3語で単語をはじめて、TOEIC900(語彙満点)なので信用してください。
また、習慣化する行動は引き金(トリガー)があると何倍も成功しやすくなります。おすすめは
- 朝起きた瞬間
- シャワーを浴びたあと
- トイレに行った直後(手を洗ってから)
ちなみに朝起きた瞬間が一番おすすめです。起床後は科学的にストレスレベルが低く、いい意味でボーっとしているので、自分をダマして「さあ勉強しよう」と唆すのです。慣れると勉強に対するストレスをほとんど感じずに、取り掛かることができます。
旅行や仕事の忙しさを言い訳にするときの対策
これは経験上、習慣になってきたところではじめて障害となるケースが多いです。これは残念ながら一貫した対策はありませんが、前述したようにカンタンな習慣を徹底することが重要です。
例えば、単語帳を持ち歩くのが面倒なら、アプリを使いましょう。1日3語でいいのですから、旅行先にわざわざ単語帳を持っていく必要はありませんし、仕事中でもトイレに行ったふりをして3語くらいこなせます。これが1日100語ならどうでしょう。トイレに行ってたフリをしても流石に覚えきれないですね。
そもそも習慣化したい行動を忘れるときの対策
例えば、誕生日の旅行先で楽しくパーティをしていたとします。このとき、あまりにもその空間が楽しく、1日中お酒を飲んで酔っ払い寝てしまう場合を想像してください。習慣化を想定したときに最悪に近いケースのひとつですね(正直わたしもあまり考えたくありません)。
この場合でも、習慣化したい行動は継続する必要があります。いくら酔っていても、イチローなら外に出てバットを振るでしょう。このときに頼れるものはやはりトリガーでしょう。
酔い覚ましにシャワーを浴びるならシャワーを浴びる(トリガー)ことで、習慣化したい行動を済ませればいいですし、筆者のように起床がトリガーならパーティ騒ぎが始まるころにはとっくに習慣行動は完了しています。
三日坊主を突破したら習慣をさらに強化する
前述した障害をクリアしたら、さらに習慣行動を強化して育てていきます。これで本格的な習慣になり、達成するとその行動は「毎日の歯磨き」と変わらなくなります。
オペラント条件付けとは
心理学用語には「オペラント条件付け」や「行動の強化」というものがあります。これによって、習慣形成を意図的に再現・強化する方法を考えていきます。オペラント条件付けは、バラス・スキナーによって提唱された行動分析学の概念です。
科学雑誌「Newton」によると、オペラント条件付けは
「報酬や罰に対して、自発的にある行動を行うように学習すること」
としています。
このときに学習される行動を「オペラント行動」と言います。実例を見てみましょう。
オペラント条件付けの例
例えば「スマホ依存」「ギャンブル依存」のような行動は、脳の報酬系という神経回路がかかわっていることは有名ですが、ギャンブルで高額の報酬を手に入れた場合、報酬系の神経細胞同士でドーパミンのやり取りが発生して、人は快楽を覚えます。この行動を「学習」して、快楽を求めた人はギャンブルに依存することになります。
このように(オペラント)行動の頻度が増えることを「強化」といいます。ギャンブルは習慣化してはいけない悪い例ですが、この話を応用すれば、例えば英語学習を習慣にすることも可能だとわかります。
オペラント条件付けの「強化」とは

強化について、もう少し詳しくみていきましょう。
先ほどのギャンブルの例のように、快楽を求めてオペラント行動を増やすことを「正の強化」といいます。

オペラント条件付けによって私たちが目指すのはこの「正の強化」です。
反対に、嫌悪される刺激によって行動を増やすことを「負の強化」と言います。例えば、会社の上司に叱られた(嫌悪される刺激があった)日にはヤケ酒をするようになることが挙げられます。
オペラント条件付けは学習の一種で、オペラント行動をとることによって「得られた結果が本人にとって有益である」ことが必要です。ギャンブルの例では「大金を手に入れる(こともある)」、ヤケ酒の例では「嫌な記憶を忘れることができる」などです。
オペラント条件付けの「報酬」

オペラント条件付けの概要がわかったところで、次は報酬について考えていきます。報酬の要素は、その報酬の「大きさ」と「頻度」に分けられます。報酬の「大きさ」「頻度」はオペラント行動が強化されるかどうか(つまり習慣にできるかどうか)に影響を与えます。
達成報酬の「大きさ」
オペラント条件付けの強化を成功させるには報酬が必要です。この報酬を脳が「大きい」と感じる場合、前述の「正の強化」が発生しやすくなると考えられています。
たとえば、あなたが10分の英単語暗記をしたとしましょう。あなたは休憩のために、大好きなコーヒーを飲もうとします。しかし、そこに別の人(パートナーor家族)が現れて「よく頑張った。ご褒美にショートケーキをあげよう。」と言ってきたらどうでしょうか。
たった10分の勉強でショートケーキが貰えると思っていなかったので、あなたの脳は快楽物質(ドーパミン)が放出されます。このとき、「10分の勉強で期待される報酬(=コーヒー)」と「思いがけない報酬(=ショートケーキ)」の差が大きければ大きいほどドーパミンの放出量は増えるとされています。
この場合の「報酬期待値(コーヒー)」と「実際の報酬(ショートケーキ)」の差を「報酬予測誤差」といいます。「報酬予測誤差」が大きいほど、私たちは報酬を「大きい」ものと感じます。これが報酬の「大きさ」です。当然ですが、最初から「今日のご褒美はショートケーキにしよう」と決めていては「報酬予測誤差」は発生しません。

この例だと、思いがけずケーキをもらうことで、英単語学習を習慣化できる可能性が上がると考えられますね。
報酬の「発生頻度」

次は報酬を与える頻度について。オペラント条件付けに用いる報酬は、報酬を与える「頻度」によってオペラント行動が「定着」、つまり強化されるかどうかに影響するとされています。
前述の英単語の話をもう一度考えてみましょう。あなたは学習を習慣にしたいと考えて、とりあえず1週間学習を続ける決意をしました。そして、学習の後はコーヒー(報酬)を与えることにします。このときコーヒーは毎日与えるべきでしょうか?それとも隔日や偶然(コインを振って表なら与えるなど)で与えるべきでしょうか。
オペラント条件付けでは、「偶然」によって発生する報酬が最も「定着」「強化」に寄与するとされています。つまり英語学習を習慣にしたい場合は、学習の後に「水(小さい報酬)」を飲む日を入れたほうが良いのです。
さらにいえば、学習の後にランダムで報酬が与えられるようにしておくと、「定着」「強化」の確率が最大になります。ギャンブルの例を考えてみると、報酬は「大きい場合」と「小さい場合」が確率によって発生するため行動を強化する仕組みができていることになります。
まとめ
今回は習慣化オペラント条件付けと行動の強化を説明しました。
この話を取り上げたのは、英語学習や読書・運動など習慣にしたい行動を多く持つ人に習慣化の理屈をお伝えしたかったからです。
野球のイチロー選手も現役時代は基礎的な素振りを欠かさなかったようですが、一見簡単に見える行動でも習慣的におこなうことは、のちに予想以上の大きな結果を得ることがあります。
習慣化の参考書
小さな習慣 (スティーヴン・ガイズ)

表紙に「目標は、ばかばかしいぐらい小さくしろ!」と書かれている。
習慣化の本を読んだことがない人はこの一冊でいいと思えるほどの名著。
7つの習慣(スティーブン・R・コヴィー)

とにかく有名な習慣の教科書。「農場に一夜漬けは通用しない。春に種まきを忘れ、夏は遊びたいだけ遊び、秋になってから収穫のために一夜漬けで頑張る。そんなことはありえない。(中略)種を蒔いたものしか刈り取れない。そこに近道はないのだ。」
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